
甲状腺
甲状腺
甲状腺は首(気管)の正面、のど仏のすぐ下にある重さ15~20g、大きさ4~5cm、蝶々が羽を広げたような形をしている器官です。甲状腺の病気には大きく分けて3種類あります。甲状腺ホルモンが高くなる病気、低くなる病気、出来物ができる病気の3つです。
甲状腺が働きすぎて勝手に甲状腺ホルモンを大量に作り分泌し血液中の甲状腺ホルモン値が高くなる病気です。ホルモンの分泌が過剰になり、代謝が高まることで症状が現れます。甲状腺が全体に腫れてくるバセドウ病が有名です。典型的な症状としては、暑がりになり汗をかきやすくなったり、手が震えたり、体重減少、動悸などが現れます。下痢や気持ちが落ち着かない、怒りっぽくなる、疲れやすいなどの症状が出ることもあります。また、眼球が突出して、周りの人に指摘されたり、目が完全に閉じなくなったりすることもあります。治療は多くの場合、まず、抗甲状腺薬による薬物療法が行われます。
橋本病は慢性甲状腺炎とも呼ばれる甲状腺機能低下症の代表的な病気です。免疫の異常により甲状腺が少しずつ破壊され、血液中の甲状腺ホルモン値が低下してきます。甲状腺ホルモンが低くなり全身の代謝が低下するため、寒がり、体重増加、体温低下、だるさ、便秘、高脂血症などが出現します。また、気分が落ち込んだり、不安感が増したりすることもあります。うつ病や更年期障害、認知症、脂質異常症として治療されていることもあるので、疑わしい症状があれば、甲状腺ホルモン値の検査をお勧めします。
甲状腺の出来物は無症状のことが多いため、頸部のしこりに偶然気づいたり、検診などで指摘されたりする方が増えています。多くは良性であり、腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)、濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)、のう胞などがあります。悪性腫瘍(甲状腺がん)は、乳頭がんと呼ばれる比較的予後の良いものが全体の80-90%を占めています。甲状腺に出来物がみつかった場合、良性、悪性を判断するために速やかな受診をお勧めします。
甲状腺にしこりができる病気のなかで最も頻度の高い疾患です。結節が多発した状態を「腺腫様甲状腺腫」、結節が単一のものを「腺腫様結節」といいますが、病態は同じです。甲状腺の細胞が増えたり、壊れたりしながらしこりを形成します。良性ですので圧迫感などの強い症状や美容上で問題がなければ、手術はせずに経過観察となります。長期の経過の中で、結節が自律性に甲状腺ホルモンを産生し機能亢進状態になる「中毒性多結節性甲状腺腫」に移行することもあります。この場合、状況によって放射性ヨード内用療法、手術、薬物療法(抗甲状腺薬)などを選択します。